ある先生が
「学年主任になりたくてなったわけではない。
本当は学級担任を希望していた。
だが、やりたくない仕事だからといって、手を抜くつもりはない。
引き受けた以上、その責任を自覚し、強い覚悟をもって取り組みたい。
将来、みなさんはやりたい仕事を選び、実際に働くと思う。
でも、やりたかったはずの仕事でも、
やりたくないと思う役割や責任を割り当てられることが必ずある。
でも、やりたくないと思う仕事を、不平や不満を述べずにやることが大事だと思う。
また、将来に限らず、今の日常生活の中でも、
やりたくなくてもやらなければならないことがあるはずだ。
それから逃れずに、手を抜かずに取り組むよう努めてほしい。」
という意味の話を頂いたことありました。
この話をされた理由は、先生がある人物の言葉に強くひかれ、
その言葉が示す生き方を、先生が目指しているからとのことでした。
今回、この言葉と、その言葉を述べた戦国時代の武将の、
小早川隆景(こばやかわたかかげ)なる人物を紹介したいとおもいます。
小早川隆景は、西日本の有力な戦国大名だった毛利元就(もうりもとなり)の
三人の子どもたちのうちの一人です。
戦国武将の中でも知将として名高い隆景は、次のような言葉を、
常に若者に対していっていました。
「隆景(たかかげ)、常(つね)に若者共(わかものども)に謂(い)いて曰(いわ)く、我心(わがこころ)に合(なかい)たることは皆(みな)身(み)の毒(どく)と思うべし。我心にむつかしきことは皆、薬(くすり)となるべきことと思うべし」
非常に厳しい言葉なのですが、私にとっては苦しいときに勇気を与えてくれる言葉です。
「我心に合(なかい)たること」
とは、自分にとって好きなこと、おもしろいこと、楽なことをさします。
「自分の好きなことや、やりたいことが思い通りにできている状況は、将来のためにならない。
体の毒だ、マイナスだ」と、隆景は厳しく指摘しています。
「我心にむつかしきこと」
とは、自分の嫌いなこと、難しいこと、苦しいことをさします。
その難しいこと、苦しいことがむしろ薬、つまり自分にとってプラスである、
と言っているのです。
「若いときにこそ、積極的に苦労を求め、いろいろなことに挑戦し、自ら困難に立ち向かえ」
と、隆景は激励しているのです。「若いときの苦労は買ってでもせよ」といわれますが、
苦労をすることで得られるさまざまな体験は、
今後のみなさんの人間形成にプラスにあることはまちがいありません。
さて、これまでのあなたの生活はどうでしたか?
「我が心にむつかしきこと(自分の嫌いなこと、難しいこと、苦しいこと)」に
チャレンジしてきたでしょうか?
それとも逆に、「我が心にかないたること(好きなこと、おもしろいこと、楽なこと)」
ばかり求めてきたのでしょうか?
自分がやりたいことだけをやり、楽ばかりしていると、あなたが楽した分、
誰かがそのしわ寄せを受けます。
そのせいで結局、周りから信頼されない人になってしまうのでは、と心配になります。
また、困難から逃げ、努力してこなかった分、心の成長は遅れることとなってしまいます。
隆景は、毛利元就の三男として生まれ、12歳で毛利家から小早川家に養子に出されました。
さらには、翌年から3年間、小早川家から他の大名のもとに人質としてあずけられました。
もし、その大名と小早川家が敵対関係になるようなことがあれば、
隆景は殺される恐れがあったのです。
戦国乱世にあって、天下統一を目指す織田信長と対立しながらも、
後に豊臣秀吉(とよとみひでよし)から厚く信頼され、
豊臣政権の大老(たいろう)にまでなった人物です。
隆景のこの言葉は、若いころ、生死の境をかけめぐった、
数々の苦労の中から体験でつかみ取った教訓なのでしょう。
まとめ
苦労や困難に立ち向かうことは、大きなプレッシャーであり負担でもあります。
ですが、そこで勇気をふるって一歩前に踏み出し、チャレンジすることが、
人生の目標達成に向けてがんばらなければならないみなさんにとって、
大切なことであるとおもいます。
とはいっても、、、、、
でも、どうしても無理なら精神が崩壊する前に、にげることも必要ですね、